2019年03月17日

2019年中国自動車産業と日本メーカーの動向

2017年の中国国内における乗用車販売(総販売台数2471万台)では日米独の外資系自動車メーカーが販売シェア上位を占めますが、こと新エネ乗用車(販売台数58万台)については、乗用車全体に占める販売シェアはまだ2%台に留まっているものの、メーカー別に見れば中国系自動車メーカーの独壇場となっています。

但し、新エネルギー乗用車(以下、新エネ乗用車)と呼ばれるものは、EV(電気自動車)、PHEV(プラグインハイブリッド車)、ならびにFCV(燃料電池車)を指します。

なお、日系自動車メーカーが得意とするHV(ハイブリッド車)は新エネ乗用車の対象外です。
自動車中国シェア.jpg
1.中国政府による新エネ乗用車シフト政策の背景
中国の新エネ乗用車へのシフト構想は今に始まった話ではなく、2012年6月に公布された自動車産業政策「省エネと新エネ車産業育成計画(2012〜2020年)」に基づいて推し進められてきたものです。

中国は諸外国に比べ新エネ乗用車シフトへの取組は後発でしたが、@新エネ乗用車購入に対する税金免除、A中央政府および地方政府による新エネ乗用車に対する購入補助金制度、B新エネ乗用車へのナンバープレート優先割当などの政策実施が奏功し、新エネ乗用車販売台数では2015年から3年連続で世界全体の市場において第1位となっています。

2.ダブルクレジット管理規制の概要
2019年1月から導入される2種類の関連規制は、この新エネ乗用車の販売を一層加速させるものと推察されます。

新たな乗用車生産・輸入規制は2017年9月に公布された「新エネ乗用車クレジット管理弁法(以下、NEV:New Energy Vehicle クレジット管理規制)」および「乗用車企業平均燃費4クレジット管理弁法(以下、CAFE:Corporate Average Fuel Efficiency クレジット管理規制)」のいわゆるダブルクレジット管理規制と呼ばれるものです。

これにより、中国で自動車を生産・輸入する自動車メーカーおよび輸入車販売企業は、電気自動車をはじめとする新エネ乗用車の一定台数以上の生産・輸入と、生産・輸入する乗用車の燃費基準の向上が義務付けられることになります。

本規制は、米国のカリフォルニア州他9つの州にて施行されているZEV(Zero Emission Vehicle)規制をベンチマークとしています。乗用車を生産もしくは輸入する企業が規制対象者となり、新エネ乗用車を生産・輸入すると規定の算出方法に基づいた「クレジット」と言われるポイントが付与されます。

付与されたクレジットが各企業のクレジット達成目標値を上回れば、余剰NEVクレジットとして他社へ売却し利益を得るインセンティブとなります。逆に下回ることになると、不足する分のNEVクレジットを他社から補填購入するなどの対応が必要となります。

つまり自動車メーカーや輸入車販売企業は、各年度の乗用車生産・輸入台数の増加に比例して、新エネ乗用車の生産・輸入台数を増やしていかなければならなくなります。

なお、中国工業情報化部より発表された2017年度のデータによると、2017年度時点で2019年度のクレジット達成目標値をクリアしている自動車メーカーおよび輸入車販売企業は、規制対象128社に対して約3割にとどまっている状況です。

中国の新エネ乗用車出荷台数の上位は、既にBYDや北京汽車、上海汽車などの中国系自動車メーカーが独占しています。更には、潤沢な資金を有するアリババやテンセント、百度などの大手IT関連企業から出資を受けた新興の新エネ車メーカーも勃興しています。一部の日系自動車メーカーは、中国市場における新エネ乗用車生産の遅れを取り戻すべく、矢継ぎ早に新エネ乗用車の投入を発表し、量産化に舵を切っている状況です。

また、2018年4月には自動車メーカーに対する外資規制緩和も発表されました。今までは、外資系自動車メーカーが中国で製造会社を設立する場合、@外資企業の出資比率は50%以内、且つA同一外資企業が設立できる合弁企業は2社まで
と規制されていましたが、新エネ車生産の工場設立に限り規制が緩和されました。

この外資規制緩和を受けて、フォルクスワーゲンやBMWは、出資比率が50%を超える3社目となる新エネ車工場設立の許可を取得しています。

3.日系自動車関連メーカーへの影響について
このように自動車産業の大変革期を迎えている中国では、自動車メーカーのみならず、サプライチェーンを形成する関連メーカーも変化に対応する必要が出てきています。

日本の中小企業庁が発表する「中小企業白書」によると、従来型のガソリン車の部品点数を3万点と仮定した場合、電気自動車の普及により基幹となるエンジン部品や駆動・伝達部品など約4割の部品が不要になると想定されています。

中国内に集積するガソリン車関連の日系部品メーカーは、中長期的な経営戦略の見直しを迫られます。
一方、新エネ乗用車の中核となる車載用リチウムイオン電池や電動化技術に強みを持つ日系メーカーには大きなビジネスチャンスが到来しています。また中国自動車市場では、大手サプライヤーと新エネ乗用車に適合する技術を有する異業種企業が、既存の縦型サプライチェーンの垣根を越えて提携戦略を組む動きも出てきています。

なお、大手自動車メーカーに既存のガソリン車関連の部品を提供していた日系自動車関連メーカーには、今まで培ってきた技術を活かした新エネ乗用車向けの商品開発力や営業提案力が求められています。

更に中国の自動車産業では、新エネ乗用車の普及に加え、自動運転技術やAI技術を駆使した交通のネットワーキング化、自動車の高度情報端末化が進められています。これまで中国の自動車産業と関係の薄かったインフラ関連やIT関連等の日系企業にも新たなビジネスチャンスが訪れています。
posted by bintian at 10:12| 最近中国政治経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年02月16日

+2.2%でも明るい日本、一方+7.4%でも先行き暗い中国!

円安を受けて、国内回帰に踏み切る企業が増加している。
パナソニック、キャノンなどが国内生産を増加させているが、この動きが本格的に加速するかどうかは定かではない。
円安がいつまで続くのか?不透明であり、また、人口減少により日本で生産するより、世界の消費地で生産する方がより有利になると言う考えが定着してきているからだ。

一方、2014年10〜12月のGDP(国内総生産)の速報値は、物価変動を除く実質で、前の3カ月と比べ、年率に換算して+2.2%と、消費税増税後、初めてのプラス成長となった。

ただ、円安、原油値下がりなどの要因が大きく、個人消費・住宅・企業の設備投資といった内需が総倒れの状況なのだ。日本経済が上向くには、海外要因がこれからも重要であることを示唆した統計となっている。

一方、すっかり正月モードに入っている中国はどうだろうか?
中国国家統計局が20日発表した2014年の国内総生産(GDP)伸び率は前年比7.4%で、1990年以来24年ぶりの低水準となった。不動産市場の低迷が需要の重しとなり、2015年も一段の伸び鈍化が見込まれている。

そして、政府の発表した7.4%という成長率が果たして本当かどうかも疑問である。
実体経済が伸びているかどうかを見る場合、より確実な指標の一つは、生産活動を支える電力消費量が伸びているかどうかである。

たとえば2013年、中国政府公表の成長率は7.7%であったが、それに対して、全国の電力消費量の伸び率は同じ7%台の7.5%であった。しかし2014年、中国全国の電力消費量の伸び率は13年の半分程度の3.8%に落ちていることが判明している。だとすれば、14年の経済成長率が依然として7%台とは疑問を抱かざるを得ない。

電力をあまり消費しないサービス業が伸びたという主張もあるだろうが、工業生産が落ち込んでいるのは肌で感じるところだろう。

2014年の中国経済の減速が政府発表以上に深刻であることを示すもう一つの数字がある。中国交通運輸省の発表によると、2014年1月から11月までの中国国内の鉄道貨物運送量は前年同期と比べると3.2%も減っていることが分かった。生産材や原材料の多くを鉄道による輸送に頼っている鉄道大国の中国で、鉄道の貨物運送量が前年比で3.2%減ということは、中国全体の経済活動がかなり冷え込んでいることを物語っている。

目に見える形で衰退が激しいのが住宅建設を主体とする不動産業。不動産バブルが崩壊して「支柱産業」としての不動産業が衰退してしまうと、今まで不動産業の繁栄にぶら下がってきた鉄鋼やセメント・建材などの基幹産業がいっせいに沈没するのは避けられないであろう。不動産投資低減のマイナス効果は、今でも既に不況に陥っているこの一連の産業の低迷に拍車をかけることになるからだ。

製造業が沈没すれば、それに支えられている雇用は大幅に減り、よりいっそう失業の拡大が予想される。しかも製造業全体の業績不振の中で従業員の賃金水準がさらに下落することも考えられる。それがもたらす致命的なマイナス効果はすなわち、中国政府が経済成長率の失速に歯止めをかける役割を多いに期待している内需の拡大がますます不可能となることだ。失業が拡大して賃金水準が下がってしまうと、今後の国内消費は縮小することがあっても拡大することはまずない。

春節明けの中国経済は目が離せない状況が待っている。

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posted by bintian at 21:55| Comment(0) | 最近中国政治経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年09月23日

役人の汚職や女性関係の裏には?

80后世代(中国の経済発展とともに生まれ育った1980年代
生まれの若者)は、中国に進出する世界中の企業から、マー
ケティングターゲットとして脚光を浴びています。

ところが、何かと注目を浴びている80后世代は実は多くの
苦悩を背負っているのです。
社会人になる前の多くの80后の口から、「社長になりたい」
「お金持ちになりたい」「バリバリ稼ぎたい」といった力
強い言葉が聞かれたものです。

しかし、いざ仕事に就くと「僕の給料は現在月5000元。何か
特別なスキルや資格を持たない限り中国の経済がこのままの勢い
で発展していったとしても、それ以上は絶対に伸びないと思う」
(上海の26歳男性)と言って、自分の給料の「上限」がなんと
なく見えるようになってしまったといった発言が多く聞かれる
ようになっています。

戦後の日本では、「一億総中流」の掛け声の下、隣近所に
追いつけ追い越せの意識で、世界でもっともボリュームの
ある中流層が育ちました。中国でも、80后が、今後増加す
る中流層の中心的プレーヤーになるであろうと言われてき
ました。

しかし、80后の実像は厳しい。

■ その1
中国では、家と車を持っていない男性は結婚相手が見つかり
にくい(中国人女性にとって、家と車を持てる経済力のある
男性というのが、大きな結婚条件の一つとなっている)。

そうした状況下であるものの、中国では不動産価格が生活者
の平均年収の15倍、北京・上海では20倍前後に達すると言わ
れています。「房奴」という言葉もメディアで盛んに取り上
げられているが、これも住宅ローン地獄に苦しむ人々のこと
を表しています。

■ その2
80后世代に特有なものとしてさらに彼らに覆い被さっている
悩みの種は、中国では年金制度がまだ整備されておらず、養老
施設の数も大幅に不足しているため、徐々に年老いてきて、
学歴も所得水準も低い世代である自分たち夫婦の両親を、金銭
的にも肉体的にも面倒みなければならないこと。

そして、一人っ子である自分の子供に過剰な教育投資も行わ
なければならないのです。

■ その3
中国で今、「官二代(役人の二代目)」「富二代(富裕層の
二代目)」「星二代(有名人の二代目)」などといった
「?二代」という言葉が盛んに使われるようになっていること
が象徴しているように、階層の固定化による失望感が漂って
いることがある。

■ その4
企業が求める熟練労働力は不足する一方、非熟練労働力は職
を見つけるのが困難というミスマッチが顕著になっています。

多くの企業は若年労働力を求めるが、出稼ぎ農民工の職への
要求水準は高くなってるために、中小零細企業は、こうした
農民工を引き付けることは難しくなっています。

また、転職が盛んなお国柄であるため、企業のほうも新卒者
よりも経験値の高い中途採用者を好む傾向が強い。これらの
状況から、大学生の五人に一人が就職できない状況です。

■ その5
農民工の最低賃金上昇のみがクローズアップされていますが
労働契約・労働環境面では、なお改善は見られません。
例えば、農民工の養老保険加入率、医療保険加入率は20%にも
満たない状況で、多くの雇用主は、‘五険’(養老、医療、障害
、失業、生育)の保険料を支払っていません。

また正式な労働契約によって雇用されている農民工は半分に満
たず、改善傾向は見られない状態です。
(但し、日本など外資企業は厳格に労働契約を守っています)

こうした数々の息苦しいプレッシャーの下、「社長になりた
い!」などといったこれまでの上昇志向・拝金主義を脱ぎ捨て
不安定な状況を乗り越えるべく、現実的な処世術を身につけ
始めている80后が増えているのです。

物価の上昇に比べ給料が上がらない、不動産なんて買えるは
ずもない。そんな状況が、大都市部の80后に、これまで目指
してきた高級高層マンションを買い、外車を買う……そんな
志向を脱ぎ捨て、節約を美徳として工夫し、割安の商品を買
い求めるといった価値観の転換を引き起こしています。

一部の富裕層の派手な消費ぶりが注目を集めていますが、
未だに中国の5割は農民です。

都会の農民工はすでに2億人を突破し、その6割が1980年代
以降に生まれた人たちです。時代の流れに伴い、第一世代の
農民工たちはだんだん年をとり、若い世代の農民工が主力に
なっています。

■ そして90后の出現
1990年代以降に生まれた新世代の農民工も社会に巣立ち始め
ました。新世代の農民工は彼らの親の世代と違って、いくつか
の特徴があります。

■ ほとんどは農作業が出来ない
 彼らは小さい頃から都市部へ出稼ぎに来た両親と一緒
に都市に暮らし、都市で育ってきました。しかし戸籍は
依然として農村にあるため、農村人口と認められます。
ところが、農村離れの生活が長いため、農村への帰属意識
が薄いのです。もちろん農作業はしたことはありません。

食べ物とか、住む家とかとにかく都会の便利な生活に慣れ
切ってしまっているために、もうとても農村には住めなく
なっている。

日本の農村では、車でコンビニやショッピングセンター
へ買い物にも行け、ある意味都会とそう変わらない生活が
できるのに、中国の農村では、車の走る道路も満足には
ないのです。

かといって都市で働いていても、戸籍は農村のまま変わ
りません。自分の足場が、固まらないのです。

故郷への思いは親の世代より薄いし、都市の戸籍がない
ので、医療や、子供の教育など、都市住民と同じ待遇も
受けられないし、どちらへの帰属意識も薄くなってしまっ
ている。

■ 望みは親の世代より高い
 彼らは親の世代より視野が広い。力仕事に満足せず自分の
やりたい仕事に就きたいという期待も高い。
親の世代のように、どんな仕事でも一生懸命に働いて故郷に
仕送りするなどという姿はだんだん見られなくなってしまい
ました。
小さい時から、都市に住んでいて、実質は都市住民のわけで
すから、そうなるでしょうね。

■ 将来への不安
 これら新世代の農民工たち、農村離れの生活に慣れたため
都市でいい仕事が見つからないと、農作業も出来ず、農村にも
戻れません。

行くところはない、精神的なより所もない。かといってこの
まま都会でどうやって暮らしていけるのだろうか?

■ 役人の汚職や女性関係の裏には?
日本の若い世代と比べると、外見はたくましくて、生きる力
生命力を感じるのですが?でも内心は、将来への不安がよぎる
都会の若い女性たちです。

たくましく生きる中国女性にとって、多くは自分で何かを成
し遂げるより、いっその事、いい相手と結婚した方がいいと
考えています。

日本でも最近、中国政府の役人の汚職や女性関係、若い女性の
結婚観についてテレビで特集され、日本人から見ると、半ばあ
きれた感じに捉えられていますが、それは、厳しい環境におか
れている農民工の厳しい生活の実態を同時に報道しなければ、
真実は分からないのです。

女性の側も、経済発展による格差拡大で「自分で稼ぐより、
金持ちに嫁いだ方がまし」との考え方が広がっています。
都会の農民工は、いくら働いても家1軒買えない現状、故郷の
農村の貧困の現状もあり、日本女性の意識とはとはだいぶ異
なっているのです。

とは言っても、テレビで報道されたような「玉の輿」に乗れ
る女性はごくわずか。結婚しない(できない)人も増えて
います。

中国の少子化は、何も一人っ子政策だけが理由ではなく、実は
こんな事情も深くかかわっています。

高齢化の進展、人件費の上昇、しかし農民工からすると、都市
に移住することへの見えない壁から、収入が上がっても幸福感
がないという問題、農民工の人手不足と大学新卒者の就職難の
併存、東部と中西部の地域バランスの変化等、こうした労働
市場の状況は、様々な意味で、中国経済社会全体の構造問題を
凝縮していると言えます。
posted by bintian at 01:33| Comment(0) | 最近中国政治経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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